シール相手面に関する研究の紹介 

<br />シール相手面に関する研究の紹介

当社Webサイト内テクニカルライブラリーページで新たに公開したホワイトペーパー(技術資料)とウェビナーは、六価クロムに代わる油圧機器のシール相手面コーティング技術の研究となっています。

油圧システムのシール相手面は、油圧機器の効率や寿命を確保する上で大変重要な役割を果たします。現在、REACH規則により、六価クロムをコーティングから取り除かなければなりません。これを受け、様々な代替コーティングに関する研究が行われえています。しかしながら、他のコーティングを施す際のシール相手面の状態は、六価クロムメッキを使用する場合と大変異なるため、さらなる研究が必要となっています。

油圧機器は、大変多くの長所を持ち義肢や航空機のランディングギア、フォークリフトや風力発電設備に至るまで、様々なアプリケーションで使用されています。つまり、これらのアプリケーションが持つ技術的な特性は、作動油の機械的特性を利用することなしには実現できません。よって、油圧の動作原理や物理特性をより理解することで、油圧システムの性能向上につながっていくと言えます。

Mandy Wilke (トレルボルグ シーリング ソリューションズ グローバル テクニカル マネジメント シニアマネージャー)によると『運動時におけるシール相手面の相互作用を学ぶことで、油圧機器の性能や寿命の最適化につながると言えます。シール、油圧作動油そして表面仕上げにより潤滑状態が決まるため、個々にではなく、これらを組み合わせて研究する必要があり、これがトライボロジーの観点からの研究が必要となる理由です。』

最新モデリング

六価クロムメッキでは、ピストンロッドの表面仕上げに関し2Dのパラメータ解析だけで十分だと考えられていました。さらに、これらが油圧システム内で及ぼす相互作用は文書化され広く理解されていました。しかし、新たなコーティングを採用する際には、より詳細な表面状態管理が必要となります。Mandy Wilkeは続けます『当社では、従来の2Dパラメータでは不十分になると考え、2Dパラメータの場合と3Dパラメータの場合の比較研究を、実際的にも理論的にも行ってきました。』

『一般的に、コーティングはピストンロッドのフリクション特性の改善や摩耗の最小化、そしてパフォーマンスの最大化のために施されています。さらにコーティングは、より優れた機能を実現するため油圧システム内で使用されるシールと相互に関連しながら作用することから、当社ではシール相手面の面粗さに関する推奨を行っています。従来使用されていた六価クロムメッキは、フリクションを下げるためには良い効果をもたらしますが、極めて強い毒性を持ち、その生成工程では発癌性物質を伴うことで知られています。』 

代替えコーティング

現在、製造業では高速フレーム溶射(HVOF:High-velocity oxygen-fuel)やニッケルやコバルト合金を使用したレーザー蒸着など様々なコーティングが使用されています。2Dのパラメータの解析でも、これらの代替コーティング技術に対し有用な部分もありますが、コーティングされた表面の形状が異なることから、生成される油膜も大きく異なってきます。『これらの違いは、粗さに関する一般論が有効ではないということを意味しており、当社では、より正確にシール相手面の状態を把握するため、標準的な2Dパラメータとともに、負荷曲線、突出山部高さ、 突出谷部高さ、コア部も検査しています。』このようにMandyは述べています。

『シール相手面の状態に関する3Dでの面粗さに関するパラメータを理解することで、当社では油圧システムの性能をより良く調整できると考えており、特にルブリケーション マネジメントの原理と融合することで、摩耗を劇的に低減させ、システム自体の寿命を延ばすことが可能と考えています。』